コラム詳細

社会保険の改正で“年収の壁”はどう変わる?

2025/09/29

段階的拡大のスケジュール解説

 現在、パート・アルバイトを含む短時間労働者に対する社会保険(厚生年金・健康保険)の適用範囲が段階的に広がっています。
 最終的には、週20時間以上働く人はすべて社会保険に加入する仕組みになる予定です。
 ただし、全国一律ですぐに適用されるわけではなく、賃金要件の撤廃企業規模要件の縮小が数年単位で進められていきます。


改正のポイント

  • 厚生年金と健康保険はセットで加入(片方だけの加入は不可)

  • 週20時間以上勤務、学生除外、2か月超の雇用見込みは維持

  • 段階的に「賃金要件」と「企業規模要件」が消える設計

  • 中小企業にとっては段階的に準備する時間がある


改正スケジュール

時期 変更点 主な対象要件 従業員要件
現行(2025年6月時点) 2024年10月改正まで反映済み ①週20時間以上
②月8.8万円以上(年収106万円)③学生以外
51人以上
2026年4月(予定) 賃金要件(月8.8万円)を撤廃 週20時間以上・学生以外 51人以上
2027年10月 企業規模要件を51→36人に縮小 週20時間以上・学生以外 36人以上
2029年10月 企業規模要件を36→21人に縮小 週20時間以上・学生以外 21人以上
2032年10月 企業規模要件を21→11人に縮小 週20時間以上・学生以外 11人以上
2035年10月 企業規模要件を完全撤廃 週20時間以上・学生以外 事業所規模を問わず全員

よくある質問(Q&A)

Q1. 給与が少ないパートでも20時間超なら保険料を払うの?

はい。2026年4月以降は賃金要件がなくなるため、時給1,100円×週21時間(年収120万円弱)でも加入対象になります。
保険料は労使折半。本人負担は増えますが、将来の年金が上乗せされるほか、傷病手当金・出産手当金などの保障も受けられます。


Q2. うちの事業所は20人規模。いつから対応が必要?

2029年10月から「21人以上」のフェーズに入るため、その時点で週20時間以上勤務する短時間労働者がいれば加入手続きが必要です。
従業員が20人以下の場合は、次の段階(2032年以降)で適用されます。


Q3. 健康保険だけ(または年金だけ)加入する選択肢はある?

ありません。社会保険は法律上一体適用のため、要件を満たすと健康保険と厚生年金に同時加入します。


Q4. 学生アルバイトはどうなる?

学生は引き続き適用除外です。
週20時間を超えても、昼間学生であれば加入不要です(企業側も保険料負担なし)。
ただし、夜間学生や通信制などは対象になるケースがあります。


まとめ

社会保険の改正は一気に全国へ広がるのではなく、**賃金要件の撤廃(2026年)→企業規模要件の段階的縮小(2027〜2035年)**という流れで進みます。
最終的には 「週20時間以上働く学生以外の人は全員社会保険に加入」 という仕組みに変わります。