クレジットカード明細とインボイス制度の実務対応
2025/09/12
クレジットカードは経費処理に便利ですが、「カード会社のPDF明細だけで経費処理できるのか?」「インボイスは必ず必要なのか?」というご質問を多くいただきます。
この記事では、インボイス制度・少額特例とクレジットカード明細の関係を、具体例を交えて分かりやすく解説します。
クレジットカード明細だけでは経費処理は不十分
カード会社のPDF明細は「支払いの事実」を示す証拠になります。
しかし、どこで・何を購入したかが分からないため、経費処理の証拠資料としては原則不十分です。
そのため、ショップごとの領収書やレシートを保存することが基本となります。
「3万円以上は領収書必須」は誤解
「3万円以上でなければ領収書は不要」といった基準は、法律上存在しません。
少額であっても内容が不明な支出は領収書が必要です。
インボイス制度での取り扱い
2023年10月から始まったインボイス制度では、仕入税額控除を受けるために「適格請求書(インボイス)」の保存が必須です。
特に以下の支出はカード明細だけでは控除要件を満たせません。
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交際費(飲食店など)
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備品や高額な購入(PC・家具など)
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資産計上となる支出(車両・設備など)
➡ 必ずインボイス対応の領収書を保存する必要があります。
1万円未満なら「少額特例」でインボイス不要(2029年9月まで)
インボイス制度には、1取引あたり1万円未満(税込)の課税仕入れについての「少額特例」があります。
この場合は、インボイスがなくても帳簿記載で仕入税額控除が可能です(2029年9月までの経過措置)。
🔹 実務でよくある具体例
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コンビニでのコピー用紙購入(800円)
→ インボイスなしでも帳簿記載で控除可能。ただしレシート保存がおすすめ。 -
タクシー代(2,000円)
→ インボイス対応でない領収書でも、帳簿記載で控除可能。 -
出張先での文房具購入(3,500円)
→ 少額特例の対象。レシートは可能な限り保存。 -
接待での飲食代(25,000円)
→ 少額特例の対象外。インボイス付き領収書が必須。
実務での整理方法
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日常的な少額支払い(1万円以下)
→ 帳簿記載 + レシートを可能な限り保存 -
1万円を超える支出・交際費・備品購入など重要な支出
→ インボイス付き領収書を必ず保存
まとめ
クレジットカード明細は便利ですが、それだけでは十分な証拠資料になりません。
原則は領収書の保存、そしてインボイス対応領収書の確保が必要です。
少額特例(1万円未満、2029年9月まで)により一定の柔軟性はありますが、将来的には一層の管理徹底が求められます。
日頃から「カード明細は補助資料」「領収書が主資料」という整理を徹底しておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. カード明細だけで経費処理してはいけないのですか?
A. 明細は「支払いの事実」を示す補助資料にすぎません。経費処理の証拠と しては不十分で、原則は領収書の保存が必要です。
Q2. 1万円未満の支払いなら領収書はいらないのですか?
A. インボイス制度の「少額特例」により、1万円未満の取引はインボイス不要で帳簿記載のみで控除可能です。ただし、レシートや領収書は保存しておく方が安全です。
Q3. 3万円以上は必ず領収書がいると聞きましたが本当ですか?
A. 法律上そのような金額基準はありません。金額にかかわらず、内容が不明な支出は領収書が必要です。
Q4. インボイスがない領収書は使えませんか?
A. 1万円以上の支出については、原則インボイスが必要です。インボイスでない領収書しかない場合は、仕入税額控除を受けられない可能性があります。