会社を解散したときの「事業年度」の考え方|株式会社と合同会社で違いあり
2025/09/29
会社を解散すると、登記や債務整理といった法的な手続きだけでなく、税務上の事業年度の取り扱いにも注意が必要です。とくに、解散後の事業年度は「株式会社」と「合同会社」でルールが異なるため、正しく理解しておかないと申告期限や決算スケジュールを誤る原因になります。
本記事では、会社解散後の事業年度の基本的な考え方と、実務上の注意点について解説します。
1. 解散日までが1つの事業年度となる
会社が解散すると、解散日がその事業年度の末日となり、そこまでの期間が「清算前の事業年度」として扱われます。
たとえば、毎年4月1日~翌年3月31日を事業年度としている会社が、2025年10月31日に解散した場合は、次のように区切られます:
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清算前事業年度:2025年4月1日 ~ 2025年10月31日(7か月間)
この期間については、通常どおり法人税の確定申告が必要です。
2. 株式会社の場合|解散日の翌日から「1年ごと」
株式会社などの場合、解散日以降は「清算事業年度」と呼ばれる期間に入り、解散日の翌日から1年ごとの事業年度が原則となります。
先ほどの例で言えば:
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清算事業年度①:2025年11月1日 ~ 2026年10月31日
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清算事業年度②:2026年11月1日 ~ 2027年10月31日
…(清算が完了するまで継続)
ただし、清算が1年未満で終了した場合は、その清算終了日が事業年度の末日となります。
つまり、清算期間が短ければ、1年を待たずに事業年度が終了する点に注意が必要です。
3. 合同会社の場合|定款で定めた事業年度のまま
一方、合同会社は株式会社と異なり、原則として定款で定めた事業年度が清算中もそのまま適用されます。
たとえば、定款で「4月1日~3月31日」を事業年度としている合同会社が2025年10月31日に解散した場合:
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清算前事業年度:2025年4月1日 ~ 2025年10月31日
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清算事業年度:2025年11月1日 ~ 2026年3月31日(定款どおり)
このように、清算後も定款の事業年度がそのまま続くのが原則です。
ただし、定款で清算中の事業年度を別途定めることも可能なので、事前に定款の内容を確認しておくことが大切です。
4. 実務上の注意点とポイント
解散後の事業年度は申告期限や決算作業に直接影響します。実務上は次の点に注意しましょう:
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✅ 清算前と清算中で決算・申告が2回必要になるケースが多い
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✅ 株式会社と合同会社では事業年度の考え方が異なるため、形態ごとに管理が必要
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✅ 清算が1年以内に完了する場合、申告期限が早まる可能性がある
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✅ 合同会社の場合は、定款の記載内容を事前に確認・見直ししておくと安心
まとめ
会社の解散は、登記や清算業務だけでなく、税務上の手続きにも大きく関わります。特に「解散後の事業年度」は、株式会社と合同会社でルールが異なり、申告期限や決算スケジュールに直接影響する重要なポイントです。
清算手続きに入る前に、定款の内容や清算スケジュールを踏まえて、税理士と十分に打ち合わせを行っておくことをおすすめします。