事業承継を支援する経営承継円滑化法とは?
円滑な事業承継を支援するために経営承継円滑化法が成立しました。
日本経済の基盤となるべき中小企業の事業承継は、雇用の確保や地域経済活力維持の観点からきわめて重要です。しかし、現状は承継について十分な準備をしている中小企業は少なく、中小企業の持つ貴重な技術力やノウハウの散逸も懸念されています。
円滑な事業承継を支援するために、①相続時の遺産分割、②資金需要、③税負担の問題等への総合的な支援策が講じられ、「経営承継円滑化法」が成立しました。
これまで数回の改正を重ねて、税制や金融支援などの優遇措置の充実が図られています。
(1) 遺産分割をスムーズにする民法特例
安定した経営のためには、後継者への株式の集中が必要ですが、後継者以外の遺族には遺留分が存在します。遺留分の放棄が法的に確定しないと、後継者は後で遺留分相当の株式を請求されるリスクがあります。
その解決策として、次の3つの民法特例が制定されました。
①除外合意
(贈与株式等を遺留分算定基礎財産から除外できる)
②固定合意
(贈与株式の評価額を予め固定できる)
③付随合意
(他の財産も遺留分算定基礎財産から除外する特例)
(2) 事業承継時の資金需要を支援する金融制度
先代経営者の死亡や退任により事業承継をする際には、相続などにより分散した株式等や事業用資産の買い取りが必要になったり、これらの資産に係る相続税の納税のため多額の資金が必要になります。
また、経営者の交代により信用状態の低下により、金融機関からの借り入れ条件や取引先との支払い条件が厳しくなるなど、資金繰りが悪化する場合があります。
さらに、親族内での後継者確保が困難となる中、M&A等により事業を承継するケースが増加しており、その際には先代経営者から株式等を買い取るための資金が必要となります。
このような先代経営者の死亡や退任が原因となって、事業活動の継続について支障が生じている中小企業者に対して、金融支援措置を講じることとしています。
(3) 課税の特例
贈与税・相続税の納税猶予
自社株の贈与は多額の贈与税が発生するケースがあり、受贈者が負担しきれない場合があります。
また相続税が多額になってしまいますと、退職金や生命保険金を含む金融財産のみでは納税資金が不足するケースが生じてきます。
それらの問題などを緩和する目的で制定されています。